バレエの歴史 20世紀後半 -亡命したスターダンサーたち-

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今日は1960年代〜70年代にかけてソ連から亡命して西側諸国のバレエ界に大きな影響を与えた3名のダンサーを紹介します。この3名はそれぞれで本が書けるくらいの情報量があるので、今日はさわりだけご紹介します。

ルドルフ・ヌレエフ

ヌレエフはロシアバレエの名門、ワガノワ・バレエ・アカデミー名教師アレクサンドル・プーシキンに師事し、ソリストとしてキーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)団に入団します。

そのエキゾチックな美貌と舞台上での存在感は傑出しており、「ニジンスキーの再来」とまで称されますが、激しい性格と反抗的な態度からKGB(ソ連国家保安委員会)から目をつけられます。

1961年、キーロフ・バレエ団が巡業公演でパリを訪れた際にKGBの追跡を逃れてフランスの警察へ駆け込み、ドラマチックな政治亡命を遂げます。

この顛末は1981年クロード・ルルーシュ監督の映画「愛と哀しみのボレロ」においてこれまた伝説的なカリスマダンサー、ジョルジュ・ドンによって再現されています。この映画については、別の記事で詳しく紹介しようと思います。

ルドルフ・ヌレエフ(1938-1993)Allan warren – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9591507による
「愛と哀しみのボレロ」より亡命シーン。オフィシャルな映像じゃないので消されちゃうかも。

また、1983年から89年にかけてはパリ・オペラ座バレエ団に招かれて芸術監督を務めました。

今年の2月にパリ・オペラ座が来日した時に行われた演目がヌレエフ版《白鳥の湖》だったよ。残念ながらチケット完売で僕は行けなかったけど。

ナタリア・マカロワ
ナタリア・マカロワ(1941-)

続いて1970年にはキーロフ・バレエ団で活躍していたナタリア・マカロワが、ロンドンでの巡業公演時に亡命しました。マカロワは世界中のバレエ団に客演し、のちに紹介するローラン・プティ、モーリス・ベジャール、フレデリック・アシュトン、ケネス・マクマミランなど主要な振付家の作品を初演するスターダンサーとなります。

また、ミュージカル女優として喜劇の才能も発揮して、ブロードウェイ上演作品『オン・ユア・トゥズ』の演技で83年にトニー賞*主演女優賞を獲得しています。

*ブロードウェイで演された演劇・ミュージカルから優秀な作品を毎年選考する、演劇界のアカデミー賞。

『オン・ユア・トゥズ』は伝統的なアメリカンミュージカルにバレエやジャズの要素を取り入れた意欲作で、1936年に初演された時の演出はジョージ・アボット、振付はジョージ・バランシンだよ。近年ではバレエ界のベッカムこと、アダム・クーパーが再演している。

ミハイル・バリシニコフ

バリシニコフはヌレエフと同じく名門ワガノワ・バレエ・アカデミープーシキンに師事し、キーロフ・バレエ団でスターダンサーとして活躍します。

ナタリアの亡命から4年後、1974年にカナダのトロント巡演中に失踪。米国に現れ政治亡命を果たします。彼は80年から89年まで、アメリカ最大のバレエ団であるアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル兼芸術監督を務めます。

また、彼は『愛と喝采の日々』(77)、『ホワイトナイツ/白夜』(85)などの映画や『セックス・アンド・ザ・シティ』(98-)などのテレビドラマに人気俳優としても出演しています。

『ホワイトナイツ/白夜』より、アメリカのタップマスター、グレゴリー・ハインズとの共演シーン。バリシニコフはソ連から亡命した世界的なバレエダンサーという、そのまんまの役で出演。敵国同心の友情を描いたこの亡命劇も冷戦下の80年代を象徴している。

ミハイル・バリシニコフ(1948-)
Saeima – 27.aprīļa Saeimas sēde, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=106611613による
『ホワイトナイツ/白夜』(85)

まとめ

今日は3名のスターダンサーたちを通じて、冷戦下の60-70年代にソ連から西側に亡命した人々による、ヨーロッパやアメリカへの影響をご紹介しました。

ヌレエフのフランスでの活躍がのちに紹介するシルヴィ・ギエムの発見につながり、マカロワのミュージカルデビューは第2次大戦前に大陸を渡ったジョージ・バランシンへと繋がり、過去と未来の世界の歴史がロシアから来た人々の影響を強烈に受けていることが分かりました。

80年代以降も東側諸国からのダンサー・振付家が西側諸国で活躍する流れは続くので、また別の機会に紹介したいと思います。

 


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