いよいよ今回で「バレエの歴史 20世紀後半」シリーズも最後となります。
前半は、まだ紹介していない西側諸国の主要なバレエ団を紹介し、後半はその他の地域のバレエを紹介します。
西側諸国のバレエ
イタリア
バレエの発祥地であるイタリアは、テクニックの高さと地中海地域の文化的な影響を受けた多様なスタイルや表現方法が特徴で、ミラノ・スカラ座バレエ団(1778)が長くバレエ界の中心を担ってきました。50-60年代にはミラノ・スカラ座バレエ学校出身のカルラ・フラッチがプリンシパルとして活躍し、「タリオーニの再来」と評されます。
フラッチと同じミラノ生まれのアレッサンドラ・フェリは80年代以降、英国ロイヤル・バレエ団やアメリカン・バレエ・シアターで活躍します。
ローマ歌劇場には1928年にバレエ学校が付設され、ローマ歌劇場バレエ団となります。
オーストリア
オーストリアのバレエの歴史は18世紀まで遡れますが、第2次世界大戦でバレエの中心地であったウィーン国立歌劇場が破壊されてしまいます。同劇場の再建にあたってウィーン国立歌劇場バレエ団(55)が誕生し、同団は21世紀に入ってからウィーン・フォルクスオーバー・バレエ団と合併してウィーン国立バレエ団(2010)となりました。
オランダ
オランダでは首都アムステルダムでネザーランド・バレエ団(58)が結成され1961年にアムステルダム・バレエ団と合併してオランダ国立バレエ団となります。
一方でネザーランド・バレエ団を退団したダンサーたちが結成したのがキリアンが芸術監督を務めたネザーランド・ダンス・シアター(通称:NDT)です。NDTは伝統的なバレエ技法を重視しつつ、革新的な作品を生み続け、現在は国際的なダンスカルチャーの最先端を走る団体として高い評価を得ています。
NDTについては、『バレエの世界史』の著者である海野敏さんによる特集記事がバレエチャンネルで掲載されているよ。
北欧のバレエ
スウェーデンとデンマークには宮廷バレエの時代からバレエ団が存在していました。デンマーク・ロイヤル・バレエ団(1771)は19世紀の振付家ブルノンヴィルの振付作品を大事に上演し続けています。
スウェーデンにはスウェーデン・ロイヤル・バレエ(1773)があり、1963年から64年まで心理バレエの生みの親、アントニー・チューダーが芸術監督を務めており、バレエ団のレパートリーを革新して多くの新しい作品を導入しました。
ほかにも、フィンランドにはフィンランド国立バレエ団(22)、ノルウェーにはノルウェー国立バレエ団(58)が20世紀に誕生しています。
全世界に広がるバレエ文化
西側諸国以外も、カナダや中南米、アフリカ、オセアニア、アジアなどバレエは全世界的な規模で広がりを見せています。以下に、その他のエリアの主要なバレエ団を地図に表しました。
地図上に示したバレエ団は以下の通り。全部覚える必要はないけど、ざっとバレエが普及している国を見渡すと、背景にはバレエ・リュスの世界巡業、第2次大戦での占領統治、そして冷戦の影響などが窺える。
- カナダ国立バレエ団 – トロント、カナダ
- レ・グラン・バレエ・カナディアン – モントリオール、カナダ
- ロイヤル・ウィニペグ・バレエ団 – ウィニペグ、カナダ
- キューバ・バレエ団 – ハバナ、キューバ
- コロン劇場バレエ団 – ブエノスアイレス、アルゼンチン
- チリ国立バレエ団 – サンティアゴ、チリ
- ケープタウン・シティ・バレエ団 – ケープタウン、南アフリカ共和国
- カイロ国立歌劇場バレエ団 – カイロ、エジプト
- ウズベキスタン国立ナヴォイ歌劇場バレエ団 – タシュケント、ウズベキスタン
- カザフスタン国立アベイ歌劇場バレエ団 – アルマトイ、カザフスタン
- モンゴル国立バレエ団 – ウランバートル、モンゴル
- 中国国立バレエ団 – 北京、中国
- 上海バレエ団 – 上海、中国
- 香港バレエ団 – 香港、中国
- 韓国国立バレエ団 – ソウル、韓国
- オーストラリア・バレエ団 – メルボルン、オーストラリア
- ニュージーランド・ロイヤル・バレエ団 – ウェリントン、ニュージーランド
- 新国立劇場バレエ団 – 東京、日本
正確な数字は分かりませんが、少なくとも全世界で56ヵ国以上*に主要なバレエ団が存在します。
*Dance Data Projectより
この数を他のスポーツや文化活動と比較すると野球が140ヵ国、ラグビーが120ヵ国、フィギュアスケートは90ヵ国とバレエより多く、チェスの盛んな国、世界の国際映画祭の数、全世界のオペラハウスの数が約60と、比較的近い数字にあります。
しかしながらこれはあくまでプロレベルの比較であり、習い事としてバレエを習っている人の数は、おそらく数百万人に達すると思われます。そうした意味では、バレエを単なる舞台で鑑賞する芸術としてのみ捉えるのではなく、より身近で多様な可能性を秘めた表現として捉えた方が良さそうです。
まとめ
今回で「バレエの歴史 20世紀後半編」は終了です。海野敏さんの著作『バレエの世界史』にはこのあと21世紀のバレエも紹介しているのですが、これまでに紹介した20世紀のバレエ史だけでもかなりの情報量があると思います。
21世紀の紹介に入る前に、僕もこれまで紹介した振付家やダンサーの作品を観たり、著作物などを読んだりして一度ゆっくり味わう時間を取りたいと思います。
次回からは両親のバレエ教室の発表会プログラムから過去40年のバレエの歩みを辿る新シリーズを始めますので、乞うご期待!!
最後までお読みいただき、有難うございます!
ブログは毎週火曜・金曜日、音声配信の「ライムライトのつぶやき」は
水曜・土曜日の朝7時に更新しています。
Xをフォロー、もしくはfacebookで「いいね」を押して頂けると、
ブログを更新したタイミングでX(旧Twitter)からお知らせします。
皆さんからのご意見・ご感想もお待ちしています。
コメント