パリ・オペラ座の料金からみるフランス

ライムライトの仕事部屋
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先日、妻が2月8日からはじまるパリ・オペラ座の「白鳥の湖」来日公演のチケットを、諸事情で行けなくなってしまった生徒さんから譲り受けて来ました。

今年は僕もなるべくバレエを観劇しようと思っていたので、良い機会だと思ってチケットを購入しようとしたら、すでに全席が完売。ネットでは30,000円以上の高値がついてチケットを買えなかった人が列をなしてを待っている状態でした。

いきなり僕の覚悟を資本主義社会に試されている気分。

あらためてパリ・オペラ座のブランド力を見せつけられたわけですが、ふと「本国フランスではいくらくらいでチケットが売られているんだろう?」ということが気になったので、調べてみました。

10段階に分けられたチケット料金

さっそくパリ・オペラ座のホームページで「白鳥の湖」の料金を調べたところ、気になったのは料金自体よりもチケット料金の価格差でした。

フランスで行われる「白鳥の湖」の公演は一番高いOptima(オプティマ)という席から、一番安い席までが10段階に分かれていました。

日本公演との価格差を調べると、日本で一番高いS席が27,000円でフランスは170ユーロ、およそ27,000円でほぼ同価格。そして一番安い席はE席が*10,000円、フランスは15ユーロ、およそ2,400円でした。

*日本でも25歳以下が購入できる席数限定のU25席は5,000円で販売されている。

「バレエは高い」っていうイメージあったけど、2,400円で世界最高峰のバレエが見られるのを

知ってちょっとビックリした。

席のバリエーションが多いのは、オペラ座には縦に伸びる3階席があって、さらに客席両サイドにガッレリア(天井桟敷)というステージを横から見下ろすような席があるので、席によってステージの見え方が大分違うことがひとつの要因としてあげられます。

また、フランスからの渡航費や設備費などを考えれば、日本公演での価格設定が本国よりも格段に割高とも思えません。

オペラ座のガッレリア(天井桟敷)からの景色

だけど日本の公演と比較すると、例えば新国立劇場バレエ団が今月末に上演する「ホフマン物語」はS席が14,107円、D席は4,702円だから価格差は3倍程度なのに対して、フランスではチケット料金に約10倍の価格差がある。

この価格差がどこから来るのか、少し調べてみました。

芸術に対する社会制度

まず、パリ・オペラ座は国立の劇場で、そこで働くダンサーもまた国家公務員であり、税金で支えられているため、安定的な運営が可能です。公演のために劇場を借りる必要はなく、上演期間も長くできるので、安価なチケットを販売できる余力が生まれます。

また、パリ・オペラ座に限らず、フランスにおいて芸術家や専門技術者が舞台、映画、テレビなどで働く場合は”Intermittent du spectacle“(IDS)と呼ばれる雇用制度が適応され、公演期間中は固定給を受け取り、失業手当などの社会的なサポートを受けることもできます。

さらに18歳までの若者を対象に、様々な文化活動に使うための年間最大300ユーロ(約4万円)を提供する”Culture Pass“という制度もあります。

ノブレス・オブリージュ (noblesse oblige)

また、同じ舞台にここまで価格差があることがフランスで許容されている背景には、貴族社会から生まれた「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」の精神が社会的に浸透しているからかもしれません。

「ノブレス・オブリージュ」とは「高い社会的地位には相応の義務が伴う」という考え方で、高い地位を有する人が自発的にその地位や権力を使って、社会貢献を行ったり寄付を行ったりすることが挙げられます。

上から下へ、縦型の行動規範が社会的に認知されていて、一般に欧米では日本に比べて大企業や高所得者による寄付が盛んです。一方、自然災害の多い日本では「同じ苦労をしているもの同士が助け合う」横の繋がりが重視されています。

わかりやすいのは飛行機で、ファーストクラスとビジネスクラスがあるおかげでエコノミークラスは安く飛行機に乗ることができる。日本はどちらかというと「みんなエコノミー席にすれば良い」という考え方だと思うけど、そうすると一人当たりの飛行機代は高くなっちゃう。

充実した社会保障と高い国民負担率

他の社会制度に目を向けてみると、たとえばフランスの教育費は、幼稚園から高校までの公立学校は完全に無料です。また、大学の費用も年に数万円程度と、子育てに一人当たり1000万円はかかると言われる日本とは大きく異なります。

一見、至れり尽くせりに感じられるかもしれませんが、「隣の芝は青く見える」もので、充実した社会保障が整備されている反面、フランスでは高い税金が課せられます

所得に対する税金の割合を調べた国民負担率では、2021年の日本が48.1%だったのに対して、フランスは69.9%で、世界で2番目に高い国となっています。

ちなみに日本も1970年の国民負担率はわずか24.3%だったので、高度成長期の日本のイケイケぶりが伺える。

まとめ

芸術の分野ばかり見ていると羨ましくなってしまうフランスですが、せっかく汗水流して稼いだお金の7割が税金でもっていかれちゃうことを思うと、国に対する信頼感が相当高くないと実際に暮らすのはしんどそうな気がします。

だからフランスはしょっちゅうデモがあるんだろうね。

さて、みなさんはどちらの社会がお好みでしょうか?

 


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