抽象絵画シリーズ -象徴主義編-

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抽象絵画ってなにがなんだかわかりませんよね。

カジミール・マレーヴィチ「黒の正方形」(1915)

いったいこの絵から何を感じろと?

考えてみれば踊りも非言語の抽象芸術です。

今、バレエの歴史シリーズで取り扱っている19世紀末から20世紀初頭は抽象芸術が大きく発展した時期であり、ディアギレフが総合舞台芸術を目指したバレエ・リュスを筆頭に、踊りとアートが非常に接近していた時期でもあります。

もしかしたら抽象芸術を理解することで、当時の人々の考え方や流行、そして踊りも理解が深まるかもしれません。

と言うわけで今回は抽象絵画シリーズと題して、踊りと絡めながら抽象絵画の成り立ちを紹介していこうと思います。

僕もアートは好きだけど、美術の先生じゃないので、皆さんがギモンなことは僕もギモン。

素人目線でわかりやすく解説するので、一緒に抽象芸術を学んでいこう!

抽象絵画シリーズ第1弾でご紹介するのは、19世紀後半にヨーロッパで流行した象徴主義です!

象徴主義とは

象徴主義を一言で説明すると、作者の感情や夢、幻想など内的な世界を具体的に表現することです。たとえば「欲望」や「恐れ」など抽象的な概念を何かに象徴させて表現します。

その代表となる絵がギュスターブ・モローが聖書を題材にして魔性の女サロメを描いた『出現』です。

以下、サロメのあらすじを紹介します。

ヘロデ王は異母兄弟の妻ヘロデアと結婚し、洗礼者ヨハネはそれがユダヤの律法に反していることを指摘する。これを快く思わないヘロデアは、ヨハネを投獄し、殺すようヘロデ王に乞うが、ヨハネを尊敬するヘロデ王は拒む。ある日、宴会の席でヘロデアの連れ子であるサロメの踊りに魅了されたヘロデ王は、好きな褒美を約束する。そこでヘロデアはヨハネの首を要求するようサロメに伝え、ヨハネは首を切られる。

この話の中で一番悪いのはヘロデアだと思いますが、モローはこの話に出てくるサロメを、男をかどわかして欲しいものを手に入れる魔性の女(ファム・ファタール)として描き出します。

同時代にフランスで流行した印象派の絵も作者の主観を絵に取り入れるものだけど、象徴主義は絵の中に作者の考え方(ここではファム・ファタール)がはっきり描かれていたので、ヨーロッパ中で大流行したんだ。

当ブログではイダ・ルビンシュテインがサロメを踊って大人気になったことを紹介していますが、もとはこの絵に触発されたオスカー・ワイルドが「サロメ」を戯曲化したのがキッカケです。

モローは新古典主義のドミニコ・アングルとロマン主義のドラクロワの両方から影響を受けている。古典を題材にしながら作者の内面世界を描いたんだ。そしてバレエ関係者はみんな大好き印象派のドガとは学友でマブダチ。ドガは現実世界を題材に自分の内面を反映させた。

ギュスターブ・モロー『出現』(1876)

モローの作品にインスパイアされて描かれた象徴主義の作品がクノップフの『スフィンクスの愛撫』です。

フェルナン・クノップフ『スフィンクスの愛撫』(1896)

スフィンクスってライオンの胴体だよね?これはどう見てもヒョウかチーター。それに男の人の顔とスフィンクスの女性の顔が似てない?

まず、ヒョウは夜行性であることから西欧では月や夜を象徴する神秘的な動物のようです。また、月は「女性」の象徴でもあります。対してあえてそっくりな顔で描かれた男性の象徴は太陽や昼です。

また、この顔のモデルになったのがクノップフの絵によく出てくる妹のマルグリットと言われています。これまで妹が登場する作品は「性」を題材にしたものではなく、むしろクノップフの分身としての女性として描かれてきました。

つまり、太陽を象徴する男性と夜を象徴する女性が融合した状態に自分自身の2面性を重ねた絵が『スフィンクスの愛撫』です。

当時クノップフがハマっていた*神秘主義では、男性でもあり女性でもあるという「両性具有」が人類の至高と考えられていました。

*フランスの神秘主義者ジョゼファン・ペラダンを長とした「薔薇十字団」のこと。

フェルナン・クノップフ「Silence」(1890) もでるは妹のマルグリット

神秘主義(オカルト)は世紀末になると流行る。日本でもオウム真理教の事件が起きたのは20世紀末だった。

まとめ

象徴主義より前の絵画にも、何かを象徴させて描くことは昔からよくありました。

それまでの絵画と象徴主義の絵画と違いは、絵の中で象徴するものがより作者の内的な感情や主観に基づくものであり、しばしば不安や死といった暗いテーマも扱われたことです。

さらに象徴主義は神話などの題材に自身を象徴させることで物質世界を超越した精神世界を描き出し、それゆえ、超自然や神秘主義とも結びつきが強く、文学や詩、音楽においても象徴主義の作品が作られました。

なんだか超越的な身体特性を備えたダンサーたちによる踊りとも相性が良さそうですよね?

そうです。象徴主義の中で至高の存在とされる「両性具有」。そのような特徴を兼ね備えて注目を集めたのがイダ・ルビンシュテインであり、ニジンスキーだったのです。

最後に、抽象絵画シリーズは山田五郎さんのYouTubeチャンネル「オトナの教養講座」をたくさん参考にさせてもらっています。ご興味をお持ちの方は是非ご覧ください。

 


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