バレエの歴史 18世紀フランス編 -3-

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18世紀後半、フランスの宮廷芸術だったバレエはヨーロッパの絶対王政諸国に広まります。その一方、バレエは芸術として以下のふたつの問題を抱え、なんらかの変革を迫られていました。

  • 旧体制の芸術のイメージが強いバレエは啓蒙思想家たちの批判の対象になった
  • バレエに演劇的な表現力が不足していた

啓蒙思想家は庶民派がお好き

1752年イタリアの巡業劇団が「奥様になった女中」と言う、プリティーウーマンみたいなオペラ・ブッファ(喜劇的オペラ)をパリで上演し、啓蒙思想家たちに絶賛されます。オペラ・ブッファは、型式ばって仰々しいフランスのオペラ・バレエよりも素朴で馴染みやすく、テーマも庶民的でした。

オペラ・ブッファを擁護したのは作曲家でもあった啓蒙思想家のジャン=ジャック・ルソー。

一方、王侯貴族やラモーなどの宮廷音楽家はフランスの伝統的なオペラ・バレエを擁護して、

一大論争に発展するんだ。

その論争の中でルソーはこんな発言をしています。

ルソー
ルソー

オペラの中に入るバレエって、物語を途中で中断させるから、いらなくない?

もう一つ、イタリアから持ち込まれフランスで定着した芸術が登場します。それがパントマイムです。パントマイムは中世イタリアの旅芸人一座「コンメディア・デッラルテ」がヨーロッパ中を巡回するために発達した非言語の技法で、18世紀にフランスで道化芝居として定着しました。

セリフでは表現できないものを身体動作で表現するパントマイムに着目したのが、美学・芸術学を研究し、当時の最先端科学なども含めて「百科全書」に収めた啓蒙思想家のドゥニ・ディドロです。

このディドロと交流があったのが後に紹介するバレエの改革者、ノヴェールです。

ドゥニ・ディドロ
Denis Diderot *oil on canvas *81 x 65 cm *signed: L. M. Van Loo / 1767

パントマイム・バレエの改革者たち

ルソーにオペラの添え物みたいに言われてしまったバレエを、パントマイムの身体動作を取り入れてオペラから独立した芸術として成立させたのがパントマイム・バレエです。ここからは、パントマイム・バレエの確立に貢献した3人の振付家を紹介します。

英国初のバレエ振付家
ジョン・ウィーヴァー【イギリス】

18世紀初頭のロンドンではフランス人、イタリア人によるバレエが上演されていましたが、ウィーヴァーはイギリスで初めてバレエを振り付けます。彼の「マルスとヴィーナスの恋」はダンスとパントマイムを組み合わせて物語を演じるバレエで、画期的な作品でした。ちなみに主演は初代「舞踊の神」ルイ・デュプレです。

実験精神ゆたかな振付家
フランツ・ヒルファーディング【オーストリア】

ウィーンの宮廷劇場でバレエ振付家として活動していたヒルファーディングは、ロシアの帝室劇場でもバレエマスターを務めたエリートです。実験精神ゆたかな彼は、古代ギリシア・ローマの演劇で行われていた顔と身振りによる舞台表現をダンサーに教えて、独自のパントマイム・バレエを創作しました。

イタリアのコンメディア・デッラルテもルーツをたどれば、ギリシア・ローマの演劇にたどり着くんだ。

また、ヒルファーディングの弟子でイタリア生まれの振付家ガスペロ・アンジョリーニは次に紹介するノヴェールの理論がヒルファーディングの盗用だと訴え、両者の論争はしばらく続きました。

ここで重要なのはどちらの主張が正しいとかではなく、ヨーロッパでほぼ同時期にバレエの変革が行われていたと言うこと。

ジャン=ジョルジュ・ノヴェール
今日のバレエの基礎を築いた超重要人物
ジャン=ジョルジュ・ノヴェール【フランス】

ノヴェールは18世紀のバレエ改革を象徴する人物であり、彼が探求したバレエは「バレエ・ダクシオン」と呼ばれ、ブリタニカ百科事典には「実質的に今日のバレエの基礎を気づいた功績者」とあります。

バレエ・ダクシオンとは、一貫性のある物語を、セリフも歌も用いず、ダンスとパントマイムで表現する黙劇としてのバレエのことです。

まとめ

ノヴェールのバレエ・ダクシオンはウィーヴァーやヒルファーディングが作ったパントマイムバレエを発展させ、体系化したものと言えます。

彼の著作には舞踊と他の芸術ジャンルとの関係、ダンサーの演技と踊り方、作品の主題と構成、演出手法、衣装、音楽、美術、指導者の資質から舞踊記譜法まで、多面的かつ具体的に論じられていて、たちまち大きな反響を呼んだそうです。

来週はバレエ改革者ノヴェールの人生をさらに詳しくご紹介します。

 


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