前回のブログでご紹介した、石垣島にある飲食店『あむりたの庭、そして音楽』の、開店17周年を記念した特別イベントの撮影に行ってきました。
その中で社会学者・宮台真司さん、MCのゆうとさん、そして主催の宮本さんによる3者トークイベントがあり、現在編集作業中です。詳しい内容は話せませんが、今回のイベントで話題に出て、書籍でも語られていることについてご紹介します。
それは「コロニアル」と「ヴァナキュラー」。
一見難しそうに思える言葉ですが、僕たちの日常や価値観にもつながる問いかけです。
リゾートホテルで考える“ふたつの世界”
まず、コロニアルとヴァナキュラーとは何か、「リゾートホテル」を例にして説明しましょう。
たとえば、外資系の高級ホテルが石垣島に進出してくるとき、コロニアルなリゾートはどこのホテルに行っても同じような作りになります。エントランスにシーサーを置いて、ロビーに三線のBGMを流して、制服に琉球柄を取り入れる。都会の人が求めるいわゆる“南国らしさ”をパッケージ化し、見た目にもわかりやすい形で提供しようとします。
そういう“南国演出”は、外から与えられるもの=コロニアルな発想です。
石垣島がどんな島で、どんな歴史があって、どんな人たちが住んでいるのかとは関係のない、画一的な発想のリゾートホテルで、はたして石垣島に興味を持ってくれる人が生まれるでしょうか?
これはきれいごとではなく、ほかと代替可能なコロニアルな発想では、リピーターが獲得しずらいということです。さらに言えば、そこで働く地元の人々は、単に観光客が落とすお金目当ての賃金労働者となり、自ら提供しているサービスに誇りを持つことができません。
一方で、島に根付いた日々の営みや地元の人々から見える世界に、たとえ外側から来た者でも寄り添い、自らの生活形式や世界観を揺るがせにするようなリゾートの営み。
こうした、その土地の人の暮らしから自然に生まれたもの=ヴァナキュラーと言います。

「コロニアル」と「ヴァナキュラー」の違いを以下のようにまとめてみたよ。
コロニアル | ヴァナキュラー | |
---|---|---|
発想の出どころ | 外部からの導入 | 内側からの生成 |
目的 | 観光・統一イメージ | 暮らし・共鳴 |
価値観 | 効率・デザイン性 | 身体性・実感 |
関係性 | 顧客とサービス提供者 | 共同体の中のつながり |
ヴァナキュラーな考え方の実践例
コロニアルとヴァナキュラーの違いはご理解いただけましたか?
つづいては実践例です。
あなたは地方の街、A市で小売業を営む住人で、A市はショッピングモールの大規模開発が進んでいるとします。あなたは開発に反対の立場ですが、幼馴染のBさんは賛成です。あなたはBさんと良好な関係を続けたいと思っていますが、どのように話せば良いのか悩んでいるとします。
観光業や雇用の面で歓迎する人がいる一方で、自然環境や生活圏への影響を心配する人もいます。
このように意見が分かれるテーマは、日常でもよくありますよね。
この問いに対して、ヴァナキュラーな回答は以下のようになります。
「賛成する側が大切にするもの、反対する側が大切にするものが違うので話は平行線になりやすい。では、そのショッピングモールを“A市でしか体験できない場”に作り変えるとしたらどうか。」
つまり、反対か賛成かという対立軸ではなく、“どんな場にできるか”という提案に視点を移すという考え方です。A市ならではの特徴を生かしたショッピングモールなら、あなたがプロジェクトに参加する余地が生まれるかもしれません。
まとめ
ここまでコロニアルとヴァナキュラーというキーワードを通じて、土地や文化、対話のあり方についてご紹介してきました。
けれども、ふと振り返ってみると、「バレエ」という芸術もまた、外からもたらされた文化だということに気づかされます。
クラシック・バレエは、フランスやロシアといった西欧から輸入された舞踊文化です。
動きの形式、身体の線、音楽の取り方まで、明確に定められたルールに従って再現されることが、ひとつの価値とされてきました。
一方で、日本にはそれとはまったく異なる地層が存在しています。
たとえば、土方巽による暗黒舞踊(舞踏)は、モダンダンスと日本の民族的身体観を融合させた、非常にヴァナキュラーな表現であるとも言えるかもしれません。
さらに、僕の祖父のように、モダンダンスとクラシック・バレエの融合を志した「モダンバレエ」という流れもありました。その系譜の中では、バレエという“かたち”に自分たちの身体性や文化的背景をどう重ねていくか、葛藤しながら探ってきたように思います。
逆に現在の日本には、外国で“本場のバレエ”を学び、そのスタイルを忠実に再現しようとする動きも根付いています。では、その営みを果たして単純に“コロニアル”と呼び切ることができるでしょうか?
言語も文化も生活習慣も、身体の特性も違う僕たちが、バレエという文化をどう受けとり、どう生かしていくのか。そこにはきっと、コロニアルとヴァナキュラーの両方が絡み合っているはずです。
その間にある葛藤や創造性を、あらためて見つめ直してみる――
そんな問いの立て方も、継承とは何かを考えるこのタイミングだからこそ、意味を持つのかもしれません。
僕が広報や制作のお手伝いをしている、スタジオアルマが参加するかんだ文化芸術プロジェクト、舞踊劇「食ってきな!-神田食味連着奇譚・蕎麦の巻-」のクラウドファンディングですが、おかげさまで目標金額を達成しました!

現在はネクストゴールとして60万円を設定して、5月31日までご支援の受付を継続しています。
皆様のあたたかいご支援を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
この公演がどんな内容なのか興味をお持ちの方は、コチラのランディングページであらすじが読めるので、ぜひご覧ください。
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