第一次世界大戦後の世界(ドイツ)

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第一次世界大戦は、ヨーロッパを主戦場に1914年から1918年まで続きました。

そして祖父は1930年から1932年の間、ドイツのベルリンに留学していました。今回から第一次大戦終戦後の1918年から1930年までの世界情勢と各国の芸術活動を、ドイツ、フランス、アメリカ、そして日本に分けて、1カ国ずつご紹介していきます。

以下の画像で、各国のトピックをまとめました。ここから4回にわたってこの表を使い回します。各国の状況を記事を読んで把握してもらいつつ、同時期に他の国がどんな状況だったかをこちらの表で確認してください。

まずは祖父の留学先、ドイツです。

多額の賠償金によりインフレが加速

第一次世界大戦においてドイツは敗戦国です。戦争により多くの人命を失い、建物は破壊され、そのうえ多額の賠償金を背負うことになります。

賠償金の支払いのために、政府は大量の紙幣を発行します。紙幣の過剰な供給はお金の価値を下げて、 反対にモノの価格を上昇させ、インフレーションを引き起こします。

1923年に賠償金の遅れを理由にフランスが炭鉱地帯のルール地方を占拠するとインフレはさらに悪化してハイパーインフレに突入。一時は卵の価格が1兆倍(!)になったそうです。

札束で遊ぶ子供たち(ドイツ連邦銀行貨幣博物館)

その後、アメリカからの資本支援が入り、生産力も回復してインフレは一旦落ち着きます。

「黄金の20年代」で花ひらいたワイマール文化

当時世界で最も先進的だと言われたワイマール憲法に基づき、1919年にドイツは「ワイマール共和国」に生まれ変わります。敗戦後も産業や科学において高い水準を維持していたドイツは、文化や芸術でも発展を遂げ、ワイマール文化と呼ばれる独自の文化圏を築きます。

以下に、ワイマール文化が花ひらいたこの時期に、ドイツで活動していた人物や団体の例をあげます。

【科学】
アルベルト・アインシュタイン
世界で一番有名な科学者!ドイツ生まれの理論物理学者で、相対性理論を提唱したことで有名です。

【哲学】
マルティン・ハイデガー
人間の存在を本質ではなく、個々人が独立して自由な事実として捉える実存主義を提唱した人。人間は自分が選択した行動によって自分自身を作り上げると考えました。

ADN-ZB/Kolbe 9.4.1980 [Datum Archiveingang] Bertolt Brecht geb. 10.2.1898 Augsburg gest. 14.8.1956 Berlin, Dichter, Theatertheoretiker und Regisseur.

【演劇】
ベルトルト・ブレヒト
劇作家。戦争や社会の不正を批判する演劇を作りました。観客に感情移入させないで、物事を冷静に考えさせる「異化効果」という演出手法が有名です。

【建築・デザイン】
バウハウス(BAUHAUS)
バウハウスは、写真・工芸・デザイン・建築・美術に関する総合的な教育を行なった学校です。無駄を廃した機能的でシンプルなデザインが特徴です。

知らない人がいても大丈夫!とにかくワイマール文化はいろんな分野が発展したと思ってください。

内面を描いた表現主義

表現主義は、第一次世界大戦前から1920年代にかけてドイツで起こった芸術運動です。作り手の内面にある主観的な表現に着目して、絵画、映画、文学、舞踊など各分野で流行しました。

  • 絵画:キルヒナー、マックス・ベックマン、カンディンスキーなど
  • 文学:トーマス・マン、フランツ・カフカ、ヘルマン・ヘッセなど
  • 映画:フリッツ・ラング「メトロポリス」、ロベルト・ヴィーネ「カリガリ博士」など
  • 舞踊:マリー・ウィグマンによる「ノイエタンツ」の確立

別の記事で取り扱いますが、ドイツ表現主義舞踊と呼ばれる「ノイエタンツ」を確立した人物、マリー・ウィグマンこそが祖父の師事した人物です。

23.1.1959 West-Berlin, Mary Wigman-Studio Mitte: M. Wigman(画面中央がマリー・ウィグマン)

マリー・ウィグマンが自らの振付について解説する貴重な映像を見つけました。

ただ、こちらは全編英語で40分もあるので、どんな感じの作品があったのかをざっと見てもらうだけでも良いと思います。仮面を用いた振り付けなどに日本の能からの影響も見て取れます。

世界恐慌からナチスの台頭

1929年、ニューヨークで発生した世界恐慌がワイマール共和国を襲います。アメリカから受けていた資本支援が一気に引き上げられ、ドイツ経済は再び困窮します。1932年には失業率は40%に達し、貧富の差が拡大。社会への不満がナチスの台頭へとつながっていきます。

祖父も留学後期は生活費が足りなくなって苦労したようです。著書には、共同生活をしていた舞踊家の女性について、以下のような記述があります。

ある朝、食事のナイフが無いのに気付いたが、その日エリザベが手首を切って自殺しかかった事があった。生活苦の為らしく、私もそんな事を見るといよいよベルリンを引き上げたくなった。

執行正俊 著「華麗なる輪舞」

このあと、1933年にヒトラーが独裁政権をはじめたことによりワイマール共和国は事実上崩壊します。

まとめ

ナチスが第一党になるのは1932年7月で、祖父が帰国するのが同年6月ですから、祖父は迫り来るナチスの足音を聞きながら、ワイマール共和国最後の輝きを享受したことになります。

次回はドイツの隣国フランスについてです。フランスも芸術界に革命が起きます!

 


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