先日、世田谷美術館で開催中の横尾忠則「連画の河」展に行ってきました。初めて車で行ったのですが、専用駐車場に車を停めると砧公園を縦断する形で世田谷美術館まで歩いて向かいます。緑が多くてとても気持ちよかったです。
今日は今回の展示会の感想と、横尾忠則の魅力について書こうと思います。

横尾忠則「連画の河」展
横尾忠則は、60年代から70年代にかけてグラフィックデザインの世界で革新的な仕事を次々と発表しました。寺山修司率いる天井桟敷や唐十郎率いる状況劇場などの公演ポスターが有名で、既存の概念を打ち破る挑発的でエネルギーに満ちた作品は、当時の若者文化やアートシーンに絶大な影響を与ました。
40代を迎えた1981年には、グラフィックデザイナーから画家への転身を宣言し、キャリアの分岐点を迎えます。
バレエ関係では、1984年にモーリス・ベジャール主宰のベルギー国立20世紀バレエ団のミラノ・スカラ座公演で「ディオニソス」の舞台美術を手がけています。
そして、88歳の今も毎日筆を握り、精力的に作品を生み出し続けています。
僕が20代の頃から彼の作品は大好きだったのですが、長く企業向けのビデオを制作してアラフィフにさしかかっている今の僕としては、40代で商業デザイナーの肩書きを手放し「画家」として活動を始めた彼自身にも興味を持っています。
今回展示されるのは、1970年に幼なじみと川辺で撮った一枚のスナップ写真を起点にした”連画”シリーズ。150号サイズの新作油彩がずらりと並び、一つひとつの絵が独立しながらも、隣り合う作品同士が水面下でつながり、川の流れのように絵から絵を呼び込むリズムを生んでいます。

今回の展示は、写真撮影がOKだった!




“とらわれない人”
僕がもつ横尾さんのイメージは「とらわれない人」です。
彼の作品にはピカソの解体的なフォルムやゴーギャンの濃密な色彩、ミロのシュルレアリスティックな記号的モチーフが顔を覗かせますが、そんなことを知らずに絵を見ても十分に楽しめるような風通しの良さがあります。
70年代にはUFOやインド哲学にハマった横尾さんの絵には、川やY字路、亡くなったひとの顔写真や、UFO、そして彼自身が登場します。そこでは生と死、此岸と彼岸がごちゃ混ぜになり、描く側、描かれる側の境目さえ消えていくような感覚があります。
60年代は幾何学的な模様とサイケデリックでショッキングなモチーフの組み合わせで一斉を風靡した横尾さんですが、最近は加齢のために線をまっすぐ描くことが難しくなったそうです。しかし、彼はそんな自分自身を「『朦朧体(もうろうたい)』が描けるようになった」と言って、受け入れています。
ある意味、脱力の境地ですね。
鑑賞をもっと楽しむコツ
今回の展示に興味を持たれた方は、明日放送される、NHKドキュメンタリー「全身芸術家 横尾忠則 88歳」(5/17 18:40〜放送予定)を先に見ておくと、作品に対する理解が深まると思います。
また、彼の作品にはY字路が多くモチーフとして登場するのですが、僕はこれまでY字路を人生の分岐点とし描いていると解釈していました。ところが、この番組の中で横尾さんは「Y字路はどっちへ進んでも結局つながる、だから迷わなくていい」と言います。
そう考えると、分岐点に立ち止まってあれこれ考えたり、右に行ったり、左に行ったりしたことで意固地になって対立したりするのがバカらしく感じるようになってきます。
メインテーマは「モラル」
そんな「とらわれない人」横尾忠則が今回の展示のテーマとした言葉が「モラル」です。
なんとも意外な組み合わせに感じますが、この言葉を伝えたのは、約束の時間を守らない横尾さんを叱った、三島由紀夫だそうです。
三島が横尾さんに語ったモラルとは「他者を思いやる最大限の愛」だそうです。

横尾忠則とは直接関係がないけど、三島由紀夫が自決する前年に東大全共闘のシンポジウムに招かれて行った討論の様子を収めたドキュメンタリー「三島由紀夫VS東大全共闘-50年目の真実-」も、非常にスリリングな内容だった。機械が人のように言葉を話すようになった今、「言葉の力」とは何か、「モラル」とはなにかを考えられる作品。
まとめ
欲望や幻想が奔放に渦巻く横尾さんの絵の底流には、常に他者へのまなざしが注がれています。次の展覧会は長年連れ添った奥様の絵が登場します。
先ほど紹介したドキュメンタリー番組の中で横尾さんは「絵を描いているんじゃなくて絵に描かされているんだよ」と発言しています。
「時間が許す限り、描かなくていけないものを描かないと。」
エゴを超越して何かにつけ動かされるように作品を描き続ける彼の姿は、まさに全身芸術家です。

スタジオアルマが参加するかんだ文化芸術プロジェクト、舞踊劇「食ってきな!-神田食味連着奇譚・蕎麦の巻-」のクラウドファンディングも折り返し地点。
この記事の執筆時点(5月16日)で現在の目標達成率は67%です。
平成編のチケットはおかげさまで完売しました!
僕のオススメリターン品は、本公演の会場を彩る「そば提灯」です。
上野ストアハウスは地下1階にあるのですが、皆さんがご支援してくださるメッセージ付きの提灯が劇場ロビーでお客様をお迎えし、日常から非日常への橋渡しをしてくれます。お花を贈る代わりにぜひ「そば提灯」での支援をご検討ください。
昭和編の予約もすでに始まっています。ご興味をお持ちの方はお早めにチケットをお求めください。
クラウドファンディングの期限は5月31日まで。
皆様のあたたかいご支援を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
詳しくはコチラまで。
最後までお読みいただき、有難うございます!
ブログは毎週火曜・金曜日、音声配信の「ライムライトのつぶやき」は
水曜・土曜日の朝7時に更新しています。
Xをフォロー、もしくはfacebookで「いいね」を押して頂けると、
ブログを更新したタイミングでX(旧Twitter)からお知らせします。
皆さんからのご意見・ご感想もお待ちしています。
コメント